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~第二章~第七話

ハクネスと対峙するアゴク。
余裕の表情を浮かべるハクネスと、攻撃によるダメージとエレメントパワーの暴走による影響で、ピンチに陥るアゴク。
一見するとハクネスの方が有利だが、アゴクは秘策を残していた。

「確率変動のマスク。」

アゴクは呟くと、全神経をマスクへと集中させる。
だが、ハクネスはその隙を見逃さなかった。
固有能力「空間移動」により瞬時に距離を詰めたハクネスは、その鋭いツメでアゴクを切り裂いた。

「・・・ぐわっ!」
地面に倒れるアゴク。
ハクネスはその様子を見下ろしながら、口を開く。
「どんな技だろうと、当たらなければ意味は無い。ましてエレメントパワーもコントロールできていないお前に、一体何が出来る。」

確かにそうだ、とアゴクは考える。
奴の空間移動能力がある限り、倒すことは愚か、一撃もダメージを与えることは出来ない。
だが。

「・・・そうだな、''当たらなければ''意味は無いかもな。」

「・・・?」

「だから俺は、この一撃に賭ける。」

アゴクは立ち上がり、呟く。
すると、ハクネスは再び空間の狭間へ逃げ込む。
アゴクは目を閉じ、大鎌を正面に構えた。
周囲にはハクネスの姿は見当たらない。

「当たらなければ意味が無いと言うなら・・・当たれば、どうなるのかな?」

アゴクのマスクが光り輝く。
身体はビキビキと音を立て、彼に限界を知らせている。
すると、空間の狭間からハクネスの声が響き渡る。

「言っただろう。お前の攻撃は俺には当たらん。何をしても無駄だ。」

「「これで、終わらせる。」」

アゴクの背後の空間が、音も無く歪み、亀裂が生じる。
と、同時にアゴクは大鎌を横に構え、一気に振り抜く。



「確率変動のマスク・・・レート、99%・・・!!」



一方、別の場所ではグローヴァがプティングと対峙していた。
グローヴァの放つ弾を、プティングはひょいひょいとかわす。
その近くではクロノが、操られたレイラーと向かい合っている。
レイラーは雷と闇のエレメントを操り、クロノに反撃の暇を与えない。

「グローヴァ!このままじゃこっちがやられる!一度気絶させてから、親を叩くぞ!」
クロノが叫ぶと、グローヴァは無言で頷いた。

「レイラー、ごめんッ!!」
クロノの回し蹴りが、レイラーの頭部にクリーンヒットする。
レイラーの体は地面に倒れたかと思うと、有り得ない角度で起き上がり、隙だらけのクロノのボディにライトニング・スピアを突き立てた。
「・・・まずいッ!!」
はんとか半身を翻し雷をかわすクロノ。
だが、一息つこうとした瞬間、視界にレイラーの右足が飛んできた。
意識が追いついた頃には、クロノの体は地面に倒れ伏していた。
そして、再びライトニング・スピアが襲いかかる。今度は避けられない。

グローヴァの立つ場所からそう遠くない場所で、クロノの叫び声が上がる。
一方でプティングはケラケラと笑い、ぴょんぴょんと岩を飛び回っている。

「やはりレイラーを救うためには、お前を倒すしかないようだな。」

「は、そんなことが出来ると思ってんのか?あんたの攻撃、さっきからちっとも当たってないぜおまぬけトーアさんよぉ。射的ゲームなら、僕ちんの方が得意かもね!」
言うとプティングは、両腕からエネルギー弾を発射する。
グローヴァは弾をすべて避けるが、間髪入れずに次の弾が襲いかかってくる。

「なるほどな、遠距離戦では勝負がつかないようだな。なら・・・。」
言うとグローヴァはクロスボウをしまい、プティングに飛び掛かった。

「な、何ぃッ!?」

「漢なら拳で語ろうぜ、腰抜け野郎!」

呆気にとられたプティングの左頬を、グローヴァの拳が捕らえる。
プティングはそのまま地面に墜落し、グローヴァはその上に馬乗りになる。
2、3打撃を食らわせると、グローヴァは後方へ飛び去る。
と、同時にプティングのエネルギー弾が、グローヴァが先程までいた場所を貫く。

「ぐ・・・クロスボウだけじゃねぇのかよマッチョ野郎・・・」

「真の男なら、肉弾戦もクールに決められねぇとな。だが・・・。」



「ゲームオーバーだ。」



起き上がったプティングの前に、最大までパワーを溜められたクロスボウが向けられる。
最早かわすことは出来ない。

ドン、と鈍い衝撃音と共に、プティングの体が飛ばされる。
身体は地面に着くと、そのまま飛ばされた衝撃でごろごろと転がっていった。

「借りは返したぜ、腰抜け野郎。」

グローヴァは告げると、クロノの元へ向かって行った。



少し離れた場所に、彼らはいた。
グローヴァが辿り着いた頃にちょうど、レイラーの洗脳が解ける。
彼女の眼は一瞬光を取り戻したかと思うと再び消え、そのままゆっくりと地面に倒れる。
グローヴァはその体をギリギリのところでキャッチすると、クロノに向き直る。

「辛い役目を任せてすまなかったな。」

「謝らないでくれ、グローヴァ。立つ瀬がない。」

「とにかく、アゴクを助けに行こう。」
クロノは続ける。
しかし、グローヴァはそれを制した。
「心配するな。アゴクなら大丈夫だ。」
「でも・・・」
「あいつは強いし、何より俺はアゴクを信頼している。奴はあんな相手に負ける男じゃねぇぜ。」

「さぁ、アロックの元へ戻ろう。戦争の状況も知りたいしな。」

「・・・あぁ、そうだな。」

グローヴァはレイラーを抱きかかえたまま、歩き出す。
クロノもそれに続く。

と、レイラーの体がピクリと動く。
「お、意識が戻ったか?」
レイラーの目に、薄らと光が灯る。
そして、レイラーは口を開いた。
「グローヴァ、か・・・すまない・・・。」

「礼を言うならクロノに、だ。敵に立ち向かうには勇気がいるが、味方に立ち向かうのにはもっと勇気がいる。彼はその役を、自ら買って出た、勇敢な男だ。」

「だからそういうのは止めてくれって、グローヴァ。俺は当然のことをしたまでだ。それに・・・アゴクを、助けられなかったしな。」

「・・・アゴクが、どうかしたのか?」
レイラーは半身を起こして尋ねる。

「心配するな、レイラー。それより今は、体を休めておけ。」
グローヴァの声を聞いたレイラーは小さく頷くと、再び眠りに落ちた。



「そうだな、グローヴァ。」
クロノが呟く。

「戦争はまだ、終わってない。」

<続く>

  # by wataridorii-ss | 2013-01-28 01:41 | ~第二章~

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